私が他人の家に忍び込んで盗みを働いていたのは10年も前の話

出勤すると、いつも明るいアルバイトの女の子が、パートさん相手にシクシク泣いている。他の社員にこっそり聞いたら、同棲している男が、恐喝だか窃盗だかの容疑で逮捕されたらしい。逮捕なんて穏やかではないが、その子自身も派手な身なりで清廉潔白とは言い難い雰囲気の子だ。恐喝や窃盗と言ってもいろいろだから、そこまで性質の悪いものでもないのかもしれない。逮捕されたということだから、うまくやれなかったというわけだし。

今でこそこの会社で真面目に配達員として働いているが、私が他人の家に忍び込んで盗みを働いていたのは10年も前の話になる。その時はそれしか生きる術がなく、見つかって逮捕されるまで、ずっと続けることになると思っていた。それが急に、子どもの頃に生き別れたままになっていた父親が亡くなり、古い家とわずかばかりの遺産が手に入り、やり直すチャンスが巡ってきたのだ。

私が今の仕事で配達を担当している地域は閑静な住宅街だが、毎日だいたい決まった時間にその地域を回っていると、たまに、普段は見かけない人間が目につくことがある。身なりこそしっかりしているが、目標があまりさだまっていないような足取りで、なんとなく周辺の家を観察しているような気配がしているのだ。そんな時、車の隣の席に座っている私の同僚は全く気付いていないようだが、私はかつての同業者としてその人間が目につく。恐らく空き巣に入れる家を探しているのだろう。

荷物を配達していても、簡単に入れそうだと思える家は沢山ある。入口の形状や鍵、防犯対策をしているかなど、ついつい昔の癖で見てしまうが、私の現役時代から10年程経っても、空き巣などに対する対策法は、あまり変わっていないように思われる。立派な門構えのお宅はセキュリティもしっかりしているが、例えばこのように「川崎海上保安署 / 写真
中堅クラスのお宅や賃貸住宅は、まだまだ稼げそうなところが沢山あり、危ないですよと思わず声をかけたくなるくらいだ。