郵便受けにつけられていた傷は泥棒のマーキングだった

私は小さい頃、早く大人になりたいと思っていた。大人くらいの目線で色々なものを見ることができるようになれば、きっと私の世界も広がるだろうと。実際に大人になり、大人目線で色々な物事を見られるようになったけれど、果たして世界が広がったかと言えば…疑問が残る。それに大人目線だからいいというものではない。現に我が家は子供目線に救われたことがあるからだ。

去年の盆休みのことだった。夫婦共働きなので、夫と一緒に休みが取れることは滅多になかったのだけど、その日はたまたま二人共休みで、車を洗ったり庭の草むしりをしたりして過ごしていた。すると、4、5歳くらいの男の子とそのお母さんが我が家の前を通りかかった。親子は手をつないで楽しそうに歩いていたが、我が家の郵便受けを通り過ぎたときに、男の子は郵便受けの下をのぞき込み、「8、1、9」と大きな声で叫んだのだ。そのお母さんが「どうしたの?」と男の子に聞くと、男の子は「だってあそこに8、1、9って書いてあったもん」と言った。その親子はそのまま去ってしまったが、私は男の子の言葉が気になって、郵便受けの下をのぞき込んだ。すると確かにそこにはアルファベットと並んで8-19と、何か尖ったもので削ったような跡が残っていた。

夫にも確認してもらうと、「空き巣の暗号かもしれない」と呟いたので、私は思わず「えぇ!?」と叫んでしまった。訪問販売の勧誘もこのようなマーキングをすることがあるらしいのだけど、表札や郵便受けの表面など、割と目立ったところにするそうだ。こんな風に、普通なら気づかれないような場所にマーキングするのは、泥棒のものであることが殆どらしい。確かに、我が家では平日の8時から19時までは殆ど留守にしている。ぞっとした私たちはやすりでその傷を消し、それからは時々郵便受けの下もチェックするようになったのだった。

子供目線に救われることもある――あの男の子に感謝だ。