私のクラスの鍵本くん

私のクラスには、変わった名字の男子がいます。鍵本くんです。
冗談のような話ですが、彼のお家は鍵屋さんです。失くしたカギを鍵穴を見ただけで作ってしまったり、開かなくなった金庫を壊さずに開けたしてくれます。それどころか泥棒対策などの総合的なセキュリティの相談まで受けてくれるということで、町内でもわりと有名です。この間なんか、一人暮らしのおじいちゃんのマンション部屋のカギが開かなくて、中のおじいちゃんが心配だからって親戚の人が警察を呼んだとき、現場に立ち会って鍵を開けていたそうです。

だからでしょうか、鍵本くんもカギが大好きです。学校にいくつも南京錠を持ってきては、クリップを曲げたやつとか、太めの針金みたいな自前の道具で開けています。それどころか教室の扉のカギまで自前で作ってしまいます。お父さんのことが大好きで「自分の父さんに開けられないカギはない」というのが彼の口癖ですが、嘘だと思います。
でもクラスの女子のロッカーのカギが無くなって、中に入れてある物が出せなくなって困ったとき、鍵本くんが針金の太いのを使って開けてくれました。こんなの簡単とか言いながらたっぷり30分かかったけど、それでもカギなしでロッカーが開けられるのはスゴイことだと思います。

音楽の時間、クラス一番の美人の吉田さんのリコーダーが無くなったとき、真っ先に疑われたのは鍵本くんでした。吉田さんは自分のロッカーにリコーダーをしまっておいたといっていましたが、結局は家に忘れてきていただけだったのです。とんだ濡れ衣を着せられた鍵本くんでしたが、「これもオレ様のピッキング技術が素晴らしいからだ」とかいって気にしていませんでした。馬鹿なんだと思います。

鍵本くんには二つ下の妹がいますが、お母さんに似ていてかなりの美人です。その美人のお母さんは変わり者で、なぜだかわかりませんがバチカン市国の旗が大好きで、コレクションをしているそうです。